【まとめ】タマネギについて

タマネギっていうのは、なんとなく地面の中に埋まっている部分が膨らんでくるっていうイメージがあるので根菜だと思われがちなんですが(僕だけ?)、実は葉菜なんですよね。

Onions
Photo by Dave Ward Photography




タマネギは葉っぱの集まり


タマネギは漢字で書くと玉葱、この玉、つまり肥大する部分は鱗片って言って、これは葉身のない葉鞘だけの葉が重なりあったものなんです。
まぁ簡単に言うとタマネギの玉は根っこじゃじゃくて葉っぱだよって話です。

生理的な話をすると、この鱗片の肥大は高温・長日の両条件が揃ったときに誘導されます
このとき必要になる日長の長短で早晩性が決まるんですね。
早生は比較的短い日長で肥大を開始し、晩生は長い日長が必要になります。
晩生になるほど結球の開始が遅くなるということですね。
平均的な中生が肥大を開始するのは日長がだいたい12〜13時間のときです。
もちろん品種によって肥大に必要になる温度も違ってきますが、だいたいは15℃ほどのようです。
傾向としては早生の玉は扁平で、晩生になるほど球体になります。

通常は玉が肥大する途中で地上部(茎葉)が倒伏します。
これは地上部の葉身に蓄えていた養分を鱗片部へ転流するために起こり、自分の持っている養分を全て鱗片にやってしまった母性あふれる葉身たちはみな貧血で倒れていくというわけですね。
このとき葉が倒れてしまっても、完全に枯れてしまうまでは玉への養分転流は続き、肥大を続けます。
なので葉っぱが倒れたからってすぐに収穫したらダメですよ。


播種期ととう立ち


播種期は秋まきと春まきがありますが、一般的なのは秋まきで、畑で冬を越して翌年の初夏に収穫します。
石川県では10月の上旬鉛筆の太さほどの苗を畑に定植するのが理想とされています。
鉛筆ってすごい適当に聞こえるんですがこれがとても絶妙な基準らしく、どの指導書見ても定植時の理想の苗は「鉛筆くらいの太さ」って書いてあるんですよね。
これより細い苗だと冬の寒さに耐えれずに枯れてしまうリスクが高まり、太い苗だと翌春にとう立ちするリスクが高まります。
とりあえず、なにがあろうと植える苗は鉛筆の太さ。これが重要です。

タマネギ栽培においてよく問題になるものに「とう立ち」があります。
一般的に植物はとう立ちによって茎葉が硬くなって食味が落ちることに加えて、タマネギはとう立ちする玉の肥大が悪くなります。
よく畑で見かける、いわゆる「ネギ坊主」がとう立ちした状態ですね。
つまりあれは失敗です
「とう」とは花を咲かせるために伸びてくる茎のことで、とう立ちすると前述したとおり茎葉の硬化や、花に養分がとられることで収穫目的物の品質が著しく低下します。
そして「とうが立つ」ためには花芽(はなめ)が分化している必要があります。
一般的に花芽分化は低温で誘導され、このことを春化(バーナリゼーション)といいます。
以下は引用です。
“植物がある限度以下の低温にあうと、花芽分化が促進される現象を春化現象(バーナリゼーション)という。”
“種子の段階から植物体が一定期間低温にあうと花芽分化が促進されることを種子バーナリゼーションという。これに対し、植物体が一定の大きさになったのちに低温にあうと花芽分化が促進されることを緑植物バーナリゼーションという。”
植物の花芽分化・とう立ちは人間の妊娠のようなものです。
生物は子孫を残すために、今までの自分のカラダを変化させることも厭わないのです。
それは自分のカラダに芽生えつつある、新しい命を守るための最大限の努力の形です。


植える時期と苗の大きさが重要


ようやく種まきについての話に入ります。
タマネギの種子の寿命ってとても短くて、一年くらいしかないんだそうです。
つまり「去年余った種を播いてみる」ことはほとんど成功しません。
余らせるぐらいならその年のうちに多めに播いて、良い苗を選抜したほうがいいですね。
(そもそも苗になる前に消えていくかもしれないし)
ちなみに発芽適温は15〜20℃です。
購入した種袋には播種適期がけっこう長めに書いてあったりしますが、厳密な播種適期っていうのはとっても短くて、これより早いと大苗になってとう立ち・分球しやすくなるし、遅いと小苗になって越冬率が下がって減収するリスクが増えます。
理想は「とう立ちしない範囲内でできるだけ大きい苗を育てる」ってことです。笑
参考に「【農学基礎セミナー】野菜栽培の基礎(農文協)」に書かれている理想の苗についての記述を引用しておきます。
“秋まき栽培では、苗齢50〜55日、草丈25cm、葉鞘基部直径6〜8mm、重さ4〜6gとなるような苗の育成を目標とする。”
上のほうでもいろいろ書いてきましたけども、タマネギの苗を自分で種から作るのってとっても難しいんです。
苗づくりで失敗したら元も子もないので、はじめての人はまずはコメリとかの購入苗でチャレンジしてみるほうが良いんじゃないでしょうか。
(値段はたしか50本で298円とかでした)
ちなみに僕はコメリの工作員じゃありませんのであしからず。笑

購入苗は買える品種が制限されてしまうのがデメリットです。
うちが田舎だからかもしれませんが、コメリに売っていたのは「OP黄」と「早生(品種不明)」の2種類のみでした。
やっぱり家庭菜園たるもの、珍しい品種にチャレンジしてみたいですもんね。
とりあえず色ついてるもの(赤タマネギとか白ナスとか)のが基本、みたいな。笑


播種後の管理


発芽後は混みあったところを間引いて健苗の育成につとめます。
(普通は2~3回間引きます)

タマネギは根系の発達が少ないので過乾燥に常に注意が必要です。
特に肥大期の水分不足は小玉化の原因になります


肥やしのこと


肥大期に入ってからの窒素が不足すると、玉の肥大が悪くなります。
また、とう立ちの増加の原因にもなります。
窒素の不足は収量・品質ともに低下するということですね。これは気をつけねばいけません。
逆に土壌中の窒素が多すぎる場合は、肥大の遅延、病害虫の被害増加、貯蔵性低下の原因となります。
なんであれ、この世知辛い世の中を生き抜いていくためにはほどほどが大事なんです。
リン酸の不足は根の発達不良につながります。
ただでさえ小さい根系がさらに小さくなり、越冬率が低下してしまいます。
リン酸は基肥にたっぷり混ぜ込んで、生育初期から十分吸収させておきましょう。
ちなみカリが不足しても玉の肥大が悪くなります。

㎡あたりの施肥基準量は、

  • N:20~25g
  • P:20~25g
  • K15~20g

です。


苗ができたら定植します

定植は平均気温8~10℃のころに行います。
植え付けは3cm程度の浅植えが基本で、緑の部分まで埋めないようにしましょう。
(タマネギ苗は根元は白くて、この部分を超えないように植える)
また、植えるときは茎葉を傷つけたり根をちぎったりしないように慎重に植えます。

栽植密度は株間10~12cm、条間20~25cmで2~4条植えにします。
(写真は株間15cm、条間20cmの2条植)

密植にするほど1玉重は小さくなります
タマネギ同士の栄養競合が起こりますからね。
ただし、ある程度密植にしたほうが1玉重が小さくなっても総収量は大きくなり、収量が最大になる栽植密は㎡あたりの30本くらいらしいです。
(早生品種を用いた小川勉氏の試験)

植え付け後は稲わらもしくは籾殻で畝表面をマルチすることが多いです。
これにより雑草抑制、地温保温、土壌流亡防止の効果が期待できます。
ただ、気象条件が悪いと十分に効果が発現しませんので、ほ場のチェックは常にしておきましょう。
写真は籾殻マルチをしたにも関わらず雨風で全て籾殻が飛ばされ、挙句の果てに地表の土も流されて苗が露わになったときのようす。

それでも枯れてないんですけどね。笑

茎葉の生長適温は15℃前後、根の発達は12~18℃ですが、耐寒性が恐ろしく強くて、-8℃でも凍害を受けないほどです。
越冬中は基本的に地上部の生長は停止しますが、地下部は伸長を続けます。
(掘り起こして確認したりしないでね)

春になって暖かくなると喜ぶのは私たちやタマネギだけじゃありません。
雑草や病害虫も急激に発生しだすので、春以降これらの対策が最重要課題です。
特に雑草対策は早め早めにやっておかないと、遅くなればなるほどこれらの作業中にタマネギの茎葉を傷つけるリスクが高まります。


あとは収穫を残すのみ


6月以降になって地上部の80%以上が倒伏したら、お待ちかねの収穫です。
このときも玉を傷つけないように慎重に収穫します。
収穫したものは、何個かペアにして葉っぱを結び、直射日光のあたらない涼しい場所に吊るしておくと長期保存ができます。
よく軒下とかに大量に吊るされているのを見かけますよね。
高温・多湿は腐敗を促進するので避けましょう。


これでうまくいけばスーパーでしばらくタマネギを買わずに生活できるはずです。
うまくいかなくてもおばあちゃんが大量に作ってたりするから不便はしないんですけどね。

それでも苗が50本で300円弱。
半分が枯れても300円で25個もタマネギが穫れれば御の字ですよね。
一度挑戦してみる価値はあると思いませんか。